AIにVBAを作ってもらって、コードが手に入った。 さて、どうしますか?

実は、ここからが本番です。

私は一度、やらかしかけたことがあります。 AIが書いてくれた「古いデータを整理するVBA」を、本物の管理ファイルでいきなり実行しそうになりました。

止まった理由は単純で、ふと思ったからです。

「これ、失敗したら元に戻せるんだっけ?」

戻せませんでした。バックアップを取っていなかったからです。

AIはコードを書くのは得意ですが、あなたの現場のファイルがどれだけ大事かは知りません。 守るのはこちらの仕事です。

今日は、私がAI製VBAを現場投入する前に必ず通しているチェックリストを書きます。

この記事で分かること
1

実行前に必ずやる「バックアップとテスト用ブック」

2

動いた後に確認する「件数照合と例外データ」

3

自分以外も使うときに増えるチェック項目


「動いた」と「現場で使える」は別物

最初に押さえておきたいのは、この区別です。

AIが書いたVBAは、たいてい動きます。 エラーなく最後まで走って、それっぽい結果が出ます。

でも「動いた」と「現場で使える」の間には、結構な距離があります。

  • いつものデータでは動くけど、月末の特殊なデータで落ちる
  • 100件なら一瞬だけど、1万件だと固まる
  • 動くけど、途中で1行だけ転記がずれている

最後のやつが一番怖い。 エラーで止まってくれた方が、まだ親切なんです。 静かに間違った結果を出されると、気づくのは数週間後だったりします。

だから、チェックは「エラーが出ないか」ではなく「結果が正しいか」を見ます。


実行前のチェック:壊れても戻れる状態を作る

AIで作ったVBAを実行する前のチェック3項目を示した図。①ファイルをコピーしてバックアップを取る、②テスト用ブックで試す、③コードの中身をざっくり眺める

1. バックアップを取る(コピー1個でいい)

大げさな話ではありません。 実行する前に、対象ファイルをコピーして「ファイル名_バックアップ_日付」を作る。それだけです。

VBAには「元に戻す(Ctrl+Z)」が効かない操作がたくさんあります。 マクロで消したデータは、基本的に戻りません。

2. テスト用ブックで先に動かす

本物のファイルのコピーか、ダミーデータを数十行入れたテスト用ブックで、まず動かします。

ポイントは、わざと変なデータを混ぜておくことです。

  • 空白の行
  • 日付欄に文字が入っている行
  • 想定より長い文字列

現場のデータは、きれいではありません。 きれいじゃないデータでも壊れないかを、本番前に見ておきます。

3. コードをざっくり眺める

全部読めなくて大丈夫です。私も全部は読めません。 見るのは2点だけ。

  • Delete、Clear、Kill など「消す系」の単語がどこにあるか
  • 保存(Save)を勝手にしていないか

消す系の処理が入っているなら、それが何を消すのかだけはAIに聞いて確認します。

このコードの中で、データを消したり上書きしたりする箇所を全部教えてください。

これで一覧にしてくれます。読めなくても、聞けばいいんです。


実行後のチェック:結果を疑う

VBA実行後の確認2項目を示した図。①件数の照合(元データと処理後の件数を比べる)、②先頭・末尾・例外データの目視確認

4. 件数を照合する

転記や集計なら、元データの件数と結果の件数を見比べます。

元が853行なのに、結果が852行なら、どこかで1行消えています。 合計金額が照合できるなら、金額でも確認します。

Excelの隅に「元件数」「処理後件数」を出すだけでも、毎回の安心感が全然違います。 私はAIに頼むとき、最初から「処理した件数を最後にメッセージで表示してください」と仕様に入れるようにしています。

5. 先頭・末尾・例外を目視する

全行は見なくていいので、この3カ所だけ見ます。

  • 先頭の数行(開始位置がずれていないか)
  • 末尾の数行(最後まで処理されているか)
  • さっき混ぜた「変なデータ」の行(どう扱われたか)

プログラムのミスは端っこに出やすい、というのが現場で覚えた感覚です。


自分以外が使うなら、チェックは2つ増える

自分ひとりで使う分には、ここまでで十分です。 でも、同僚にも配るとなったら話が変わります。

6. 操作ミスへの耐性を確認する

自分なら「実行前にこのシートを開いておく」と分かっていても、他の人は分かりません。

  • 違うシートを開いたまま実行したらどうなるか
  • 2回連続で実行したらどうなるか

試しておきます。必要なら「実行していいか確認するメッセージ」をAIに追加してもらいます。

7. 説明メモを1枚つける

「何をするマクロか」「実行前にやること」「変な結果が出たら誰に言うか」。 この3行のメモがあるだけで、現場のトラブルは半分以下になります。


チェックリストまとめ

AI製VBAの現場投入前チェックリスト7項目の一覧図。バックアップ、テスト用ブック、消す系処理の確認、件数照合、端と例外の目視、操作ミス耐性、説明メモ

  • ① バックアップを取ったか
  • ② テスト用ブックで動かしたか(変なデータ入りで)
  • ③ 「消す系」の処理がどこにあるか把握したか
  • ④ 件数・金額を照合したか
  • ⑤ 先頭・末尾・例外データを目視したか
  • ⑥ (配るなら)操作ミスに耐えるか試したか
  • ⑦ (配るなら)説明メモをつけたか

慣れれば①〜⑤は10分かかりません。 本番ファイルを壊して復旧する時間と比べたら、安いものです。


まとめ:AIは書く係、守る係はこちら

AIにVBAを作ってもらう流れの中で、役割分担ははっきりしています。

書くのはAI。 でも、現場のファイルを守る責任までは、AIは持ってくれません

そもそもの「AIへの頼み方」はこちらで書いています。

ChatGPTやClaudeにExcel VBAを組んでもらう前に、非エンジニアが整理しておくべきこと

コードを受け取った直後の「丸投げの危なさ」はこちら。

AIにコードを書いてもらうとき、丸投げすると危ない理由

そして、AIに相談する段階で情報を漏らさない話はこちらです。

Excel VBAをAIに作らせるとき気をつけたい情報漏えい対策

頼む前の整理、渡すときの安全、受け取った後の確認。 この3点セットが揃うと、AIとVBAは現場で本当に頼れる道具になります。

よくある質問

AIが作ったVBAはそのまま使ってはいけないのですか?
そのまま本番ファイルで実行するのは危険です。最低でもバックアップを取り、テスト用ブックで一度動かしてから使うことをおすすめします。
コードが読めないのに、チェックなんてできますか?
できます。「消す系の処理がどこにあるか教えて」とAIに聞く、件数を照合する、端のデータを目視する。どれもコードを読まずにできる確認です。
テスト用のデータはどう作ればいいですか?
本物のファイルのコピーか、ダミーデータ数十行で十分です。空白行や形式違いのデータをわざと混ぜておくと、現場投入後のトラブルを先に発見できます。
VBAの実行で一番多い失敗は何ですか?
エラーで止まる失敗より、「エラーなく動いたが結果が微妙に間違っている」パターンが厄介です。件数照合と端の目視で早めに気づけるようにしておくのが大事です。
同僚に配るときの注意点はありますか?
自分以外の人は想定外の操作をする前提で考えます。実行確認のメッセージを入れる、3行の説明メモをつける、の2つだけでトラブルは大きく減ります。