AIを仕事に使おうと思ったとき、最初にやりがちなのは「どのAIツールを使えばいいか」を探すことです。

ChatGPTがいいのか。Claudeがいいのか。画像生成AIなのか。自動化ツールなのか。

私も最初、ツール比較の記事を読みあさりました。 そして、読み終わっても何も始まりませんでした。

いま振り返ると、順番が逆だったんです。

会社員が日々の仕事でAIを使うなら、最初にやるべきはツール選びではなく、自分の仕事の中にある”面倒な作業”を棚卸しすることです。

AIは「何を助けてほしいのか」が見えていないと、うまく使えないからです。

この記事では、現場で働く会社員がAIを使い始める前にやっておきたい「面倒な作業の棚卸し」について、実務目線で整理します。


AI活用は、いきなり大きな改善を狙わなくていい

AI活用は、ツール探しより先に順番がある。会社員が最初にやるべき4ステップ:面倒な作業に気づく、作業をメモする、AIに手伝ってほしい部分を分ける、小さく試す。いきなり「AIで何ができるか」を考えなくていい

AI活用という言葉には、大げさな響きがあります。

業務改革。DX推進。自動化。生産性向上。

こう並ぶと、「何か大きな仕組みを作らないといけないのかな」と構えてしまいます。

構えなくて大丈夫です。

  • 毎回似たようなメール文を考えている
  • 会議メモをあとから整理するのが面倒
  • Excelの表を見ながら、手で転記している
  • 報告書の文章を毎回ゼロから書いている
  • 過去の資料を見ながら、似たような文章を作っている

一つひとつは小さい作業です。 でも、毎日・毎週・毎月くり返すと、思った以上に時間を食っています。

AIの入口は、この「小さいけれど、地味に面倒な作業」を見つけることです。


「AIで何ができるか」より「何に困っているか」から考える

AIを使おうとすると、つい「AIで何ができるか」から考えたくなります。

順番を逆にしてください。 先に見るのは、AIの機能ではなく、自分の困りごとです。

  • 何度も同じ説明をしている作業はないか
  • 毎回文章を考えるのに時間がかかっていないか
  • Excelやシステムから情報を拾ってまとめていないか
  • ルールはあるのに、人によって判断がバラつく作業はないか
  • 「分かっている人に聞かないと進まない作業」はないか

こう見ていくと、AIに任せられそうな作業が浮かんできます。

大事なのは、「AIで全部やる」と考えないこと。 全部任せるのではなく、仕事の一部を手伝ってもらう。 このくらいの距離感が、会社員の実務にはちょうど合います。


面倒な作業は、3つに分けると見つけやすい

全業務を見直そうとしなくて大丈夫です。 3つに分けて見ると、見つかります。

面倒な作業は、3つに分けると見つけやすい。AIに手伝ってもらいやすい作業の見つけ方。1.文章を作る作業(メール文・報告書・案内文。毎回少しずつ違い書くのに考える作業)、2.情報を整理する作業(会議メモ・Excelの表・日報の整理。集めた情報を読みやすく整える作業)、3.判断の前に確認する作業(メリット・デメリット整理、リスクの洗い出し。最終判断の前に考える材料を整える作業)。AIに最終判断を任せるのではなく、考える前の整理を手伝ってもらう

1. 文章を作る作業

メール、報告書、議事録、マニュアル、案内文、依頼文。

会社の仕事には、思っている以上に「文章にする作業」があります。 しかも、よく見ると完全に新しい文章はほとんどありません。

前にも似た文章を書いた。毎回少しだけ内容を変えている。失礼がない表現にするのに時間がかかる。

こういう作業は、AIと相性抜群です。 ただし丸投げではなく、元になる情報や目的は人間が整理します。

2. 情報を整理する作業

会議メモ、問い合わせ内容、作業記録、Excelの表、日報。

情報自体はある。でも、読みやすく整理するのに時間がかかる。

箇条書きを整理する。長い文章を要約する。内容を分類する。手順に並べ直す。

現場では、情報を集めることより「人に伝わる形に整えること」に時間を取られます。 その整理部分だけでもAIに渡せると、目に見えて軽くなります。

3. 判断の前に確認する作業

ここは少し注意が要ります。 AIに最終判断を任せる、という意味ではありません。

判断する前の材料整理を手伝ってもらうんです。

  • この案のメリット・デメリットを整理する
  • 抜けている観点を出してもらう
  • リスクを洗い出す
  • 反対意見が出そうな点を考える

最後に判断するのは人間。 でも、その前の「考える材料」を整えるところで、AIは相当に頼れます。


棚卸しするときは「イラッとした作業」から見る

棚卸しといっても、きれいな業務一覧は要りません。 最初はもっと雑でいいです。

おすすめは、仕事中に**「またこれか」と思った瞬間をメモする**ことです。

  • また同じ文章を書いている
  • また前回の資料を探している
  • またExcelから転記している
  • また説明し直している
  • また誰かに聞かないと分からない

この小さなイラッが、AI活用の入口です。

現場の改善は、きれいな理論からは始まりません。 「地味な面倒」への苛立ちから始まります。 少なくとも、私の場合は全部そうでした。


棚卸しメモは、5項目だけでいい

面倒な作業を見つけたら、メモするのは5項目だけです。

  • どんな作業か
  • いつ発生するか
  • 何が面倒か
  • 今はどうやっているか
  • AIに手伝ってほしい部分はどこか

「棚卸しメモは、5項目だけでいい」面倒な作業をAIに相談しやすくするメモの型。1.どんな作業か:会議後にメモを整理して共有する、2.いつ発生するか:週1回の定例会議のあと、3.何が面倒か:話が前後して要点整理に時間がかかる、4.今はどうやっているか:手書きメモを見ながら自分で文章化、5.AIに手伝ってほしい部分はどこか:決定事項・次にやることの分類。5つ書けると、AIにかなり相談しやすくなる

たとえば、会議メモの整理が面倒な場合。

  • どんな作業か:会議後にメモを整理して、関係者に共有する
  • いつ発生するか:週1回の定例会議のあと
  • 何が面倒か:話が前後していて、要点をまとめるのに時間がかかる
  • 今はどうやっているか:手書きメモを見ながら、自分で文章にしている
  • AIに手伝ってほしい部分:要点整理、決定事項、次にやることの分類

ここまで書ければ、もうAIに相談できます。

「会議メモをまとめて」だけでは、AIは何を重視すればいいか分かりません。 でも、目的と困っている部分が書いてあれば、返ってくるものが実務に近づきます。


AIに渡せる形にするだけで、仕事は少し軽くなる

棚卸しの効能は、AIに頼めることだけではありません。

自分の仕事を言葉にすると、頭の中が整理されます。

「何となく面倒」だった作業を分解してみると、

  • 毎回文章を考えるのが面倒なのか
  • 情報を探すのが面倒なのか
  • 判断基準があいまいなのか

正体が見えてきます。

正体が見えれば、AIに頼むかどうかに関係なく、打ち手が見えます。 文章作成が面倒ならテンプレート化。情報整理が面倒なら入力項目の統一。判断基準があいまいならチェックリスト。

AIは魔法の道具ではありません。 でも、自分の仕事を言葉にするきっかけとして使うと、かなり強い道具になります。

なぜ「言葉にする力」がAI時代に大事なのかについては、こちらの記事でも詳しく整理しています。

現場の不便を”AIに渡せる言葉”にする力


最初の1件は、小さくて失敗しても困らない作業がいい

AI活用の最初の1件に、大きな業務を選ばないでください。

部署全体の業務改善や、重要な判断が絡む作業から始めると、ハードルが上がりすぎます。

向いているのは、失敗しても困らない作業です。

  • 自分用のメモ整理
  • 社内向けのたたき台文章
  • 会議前の論点整理
  • メール文の言い回し調整

ポイントは、AIの出力をそのまま使わないこと。 AIにたたき台を作ってもらい、最後は自分で確認する。

この距離感なら、明日からでも始められます。


面倒な作業を見つけたら、次は作業手順を書き出すと、AIに相談しやすくなります。

AIに業務改善を頼む前に、作業手順を書き出す理由

棚卸しで見つけた作業は、すぐ自動化しなくていい

面倒な作業を見つけると、すぐ自動化したくなります。 その気持ちは、いったん保留で。

最初は「AIに相談するだけ」で十分です。

  • この作業を楽にする方法を整理してもらう
  • 手順を分解してもらう
  • テンプレート化できる部分を探してもらう
  • VBAやスプレッドシートでできそうか相談する

自動化は、最後の手段です。

その前に、作業を整理する。手順をそろえる。テンプレートを作る。 この小さな整備だけでも、十分に効きます。


まとめ:AI活用の入口は、ツールではなく「面倒の発見」

会社員がAIを使うのに、特別な知識は要りません。

必要なのは、自分の仕事の中にある「面倒な作業」を見つけること。

  • 何に困っているのか
  • どこで時間がかかっているのか
  • どの部分ならAIに手伝ってもらえそうか
  • 最後に人間が確認すべき部分はどこか

これを言葉にすることが、すべての出発点です。

棚卸しは、AIに仕事を丸投げするためではありません。 自分の仕事を見える形にして、少しずつ楽にしていくための準備です。

まずは今日の仕事の中で、「またこれか」と思った作業を一つだけメモしてみてください。

ツール比較の記事を10本読むより、そのメモ1枚のほうが先に進めます。

棚卸しから先、メモが実際に仕組みになるまでの道のりは「現場の不便をAIで仕組みに変えるまでの流れ【全体まとめ】」にまとめています。

よくある質問

面倒な作業の棚卸しは、どうやって始めればいいですか?
まずは1日の仕事の中で「またこれか」と感じた作業を一つだけメモしてみてください。それだけで棚卸しの第一歩になります。
棚卸しした作業は、すぐにAIで自動化すべきですか?
いいえ。まずはAIに相談して作業を整理してもらうだけでも十分です。自動化は最後の手段で、手順を整えるだけでも効果があります。
面倒だと感じる作業が多すぎて、どれから手をつけるか迷います。
毎日やっている作業、時間がかかっている作業、ミスが起きやすい作業を優先するのがおすすめです。一つずつで大丈夫です。
自分の仕事が面倒かどうか、よく分かりません。
「毎回同じことをしている」「手順が多い」「終わったあとに疲れる」と感じる作業は、面倒な作業の候補です。感覚を手がかりにしてみてください。
棚卸しのメモは、どんな形式で書けばいいですか?
形式は何でも構いません。紙のメモ、スマホのメモ、付箋でもOKです。大事なのは形式ではなく、気づいたときにすぐ書き留めることです。