Excel作業をChatGPTやClaudeに相談したのに、うまい答えが返ってこない。
これ、AIが使えないからではありません。 こちらの伝え方が、少し足りないだけです。
たとえば「この表を自動化したい」と伝えるだけでは、AIは何をどう判断すればいいのか分かりません。
人に仕事を頼むときと同じです。 「今どうなっているか」「何に困っているか」「どうなれば助かるか」を渡さなければ、相手は動けません。
この記事では、Excel作業をAIに相談するときの頼み方を、悪い例・良い例で整理します。
VBAや関数に詳しくなくても大丈夫です。 現場の作業を言葉にできれば、それで戦えます。
そもそも何をAIに相談すればいいか迷う場合は、まず面倒な作業の棚卸しから始めると整理しやすくなります。
Excel作業をAIに相談するとき、最初につまずくところ
最初のつまずきは、だいたい「何を頼めばいいか分からない」です。
そして、こうなります。
このExcelを便利にしたいです。 VBAを作ってください。
気持ちは痛いほど分かります。 現場には毎日同じ転記と集計があって、「とにかく楽にしたい」が本音だからです。
でも、この伝え方だとAIは判断に困ります。
- 今、どんな作業をしているのか
- どこに時間がかかっているのか
- 何を自動化したいのか
- どこまで人が確認する必要があるのか
- 完成形をどうしたいのか
何ひとつ分からないからです。
子どもに「部屋をいい感じにして」と言うのに似ています。 片付けてほしいのか、掃除してほしいのか、おもちゃを棚に戻してほしいのか。 分からなければ、動きようがありません。
「便利にして」ではなく、「何を、どう便利にしたいのか」。 ここからです。
悪い頼み方は「作りたいもの」だけを言ってしまう
悪い例の典型は、いきなり完成物だけを頼むことです。
Excelの集計を自動化するVBAを作ってください。
頼み方が悪いというより、情報が少なすぎるんです。
AIからすると、地図なしで目的地に向かうようなもの。 「東京に行きたい」と言われても、今どこにいるのか、電車か車か、何時までに着きたいのか分からなければ、案内できません。
そもそも、ひとくちに「集計」と言っても、
- 日付ごとに集計したい
- 担当者ごとに集計したい
- 商品ごとに数量を合計したい
- 別シートに一覧化したい
- 月ごとにファイルを分けたい
と、中身は人によってバラバラです。
だから、完璧なプロンプトを書こうとするより、まず作業の中身を分解して伝えること。 これが先です。

良い頼み方は「今の作業」と「困りごと」から伝える
良い頼み方は、いきなり「VBAを作って」ではなく、現状から入ります。
毎日、受注データをExcelに貼り付けています。 A列に日付、B列に商品名、C列に数量、D列に担当者が入っています。 今は手作業で担当者ごとの数量を集計していますが、毎回10分ほどかかっています。 担当者ごとの数量合計を別シートに自動で作れるようにしたいです。 VBAでできるか、まず考え方を教えてください。
この相談文には、AIに必要な材料がほぼ入っています。
どんな表か。どの列に何が入っているか。今どんな作業をしているか。何に時間がかかっているか。どうなれば助かるか。 そして、いきなりコードではなく考え方から知りたいこと。
ここまで伝われば、AIは「担当者ごとに数量を合計して、別シートに出す処理が必要だ」と判断できます。
かっこいい言葉は一切要りません。 現場でやっている作業を、順番に説明する。 それだけです。

AIに渡すとよい情報は5つある
渡すと効く情報は、5つです。 きれいに埋めることより、AIに状況が伝わる書き方を優先してください。
1つ目は、今の表の形。
「Excelを使っています」では、表の状態が見えません。
A列に日付、B列に担当者、C列に数量が入っています。
列の役割が分かる書き方にします。
2つ目は、今やっている手作業。
「集計しています」だと、実際に何をしているのかがぼやけます。
担当者ごとにフィルターして、数量を手で合計し、別シートに転記しています。
ここまで書くと、AIは作業の流れを追えます。
3つ目は、困っていること。
「大変です」より、何が大変なのか。
毎回同じ作業に20分かかります。 転記ミスが出ると、あとから確認に時間がかかります。
「時間を減らしたいのか」「ミスを減らしたいのか」をAIが判断できるようになります。
4つ目は、理想の完成形。
ボタンを押したら、担当者ごとの数量合計が別シートに出る形にしたいです。
ここまで書けば、回答は一気に具体的になります。
5つ目は、守りたい条件。
元データは消したくありません。 既存の書式は残したいです。 会社名や品番はダミーに置き換えて相談します。
やってほしくないことや前提も渡しておくと、提案が現場に合いやすくなります。
特に会社のExcel作業では、実データをそのままAIに貼り付けないこと。 社名、品番、個人名、金額は、ダミーに置き換えてから相談するほうが安全です。
この記事では、AIにどう伝えると相談しやすくなるかを整理しています。VBAを実際に組んでもらう前の技術的な整理については、こちらの記事で詳しくまとめています。
悪い例・良い例で比べてみる
実際の相談文を並べてみます。

悪い例
このExcelを自動化したいです。 VBAを書いてください。
表の形も、作業内容も、完成形も分からない。 返ってくるのは一般的な回答で、コードを見ても「なんか違う」となる可能性が高いです。
良い例
Excelで日報を集計しています。 「入力」シートのA列に日付、B列に作業者名、C列に作業内容、D列に数量が入っています。 今は作業者ごとに数量を手作業で合計し、「集計」シートに転記しています。 毎日同じ作業で、転記ミスもあります。 「入力」シートのデータをもとに、作業者ごとの数量合計を「集計」シートに作るVBAを考えたいです。 まずは処理の流れを日本語で整理してから、コード案を出してください。
注目してほしいのは、最後の一行です。 いきなり「正解のコード」を求めず、まず処理の流れを日本語で整理してもらっているところ。
これが効きます。
ExcelやVBAに慣れていない人ほど、いきなりコードをもらうと、どこを直せばいいのか分からなくなります。 先に日本語で流れを見れば、「あ、この部分は違う」「ここはうちの作業と合っている」と判断できるんです。
いきなりコードを書かせない方がうまくいくこともある
最初の相談では、こう頼むのがおすすめです。
まず、処理の流れを日本語で整理してください。 そのあと、VBAで実現する場合の考え方を教えてください。
たとえば、AIがこう整理してくれたとします。
- 入力シートの最終行を確認する
- 作業者名ごとに数量を合計する
- 集計シートを初期化する
- 集計結果を書き出す
- 完了メッセージを表示する
この流れを見れば、コードが読めなくても「やりたいことに合っているか」は判断できます。 違和感があれば、コードを書く前に直せます。
家を建てる前に、間取り図を見る。 いきなり工事を始める工務店があったら、怖いですよね。 それと同じです。
AIへの頼み方は「命令」より「相談」に近い
AIに頼むとき、強い命令文にする必要はありません。 現場の作業を一緒に整理してもらう感覚のほうが、うまくいきます。
この作業を自動化したいのですが、VBAで作る前に、作業手順として足りない情報がないか確認してください。
このExcel作業をAIに説明するために、現状・困りごと・理想の形に分けて整理してください。
まだコードは不要です。まず、この作業を自動化するならどんな処理が必要か教えてください。
こうすると、AIは「コードを書く係」ではなく「作業を整理する相手」になります。
そして、この使い方が一番向いているのは、AIに詳しい人ではありません。 現場の作業を知っている人です。
AIは現場を見ていません。 どの作業が面倒で、どこでミスが起きやすくて、どこは人が確認すべきか。 それを知っているのは、毎日その作業をしている人だけです。
AIに必要なのは、完璧な専門用語ではなく、現場のことを順番に言葉にすること。 これは現場の人間の得意分野のはずです。
相談文の型を1つ持っておく
毎回ゼロから考えるのは大変なので、型をひとつ持っておくと楽です。
Excel作業について相談です。
【今の表】 ・シート名: ・列の内容: ・データの量:
【今やっている作業】 ・
【困っていること】 ・
【理想の形】 ・
【条件】 ・元データは消さない ・会社名や個人名はダミーにしています ・まずは日本語で処理の流れを整理してほしいです
これはプロンプト集というより、「説明のメモ」です。
AIに相談する前に、自分の頭を整理するメモ。 そして面白いことに、このメモがあると人に相談するときも説明がうまくなります。
AIを使う力というより、仕事を分かりやすく伝える力。 結局、同じものなんだと思います。

なぜ現場の作業を言葉にすることが大事なのかは、こちらの記事でも整理しています。
まとめ:AIにうまく頼むコツは、現場の作業を分解すること
Excel作業をAIに相談するとき、完璧な頼み方は要りません。
伝える順番は、これだけです。
- 今どんな表を使っているか
- 今どんな手作業をしているか
- 何に困っているか
- どうなれば助かるか
- 守りたい条件は何か
この5つがあるだけで、AIの答えは変わります。
「AIに相談する」と聞くと、難しいプロンプトの話に聞こえるかもしれません。 でも実際にやることは、いつもの作業をひとつずつ言葉にするだけです。
この記事は、AIへの「伝え方」を整理しました。VBAを実際に組んでもらう前の「技術的な整理」については、こちらの記事で詳しく書いています。
AIは魔法の道具ではなく、現場の面倒な作業を一緒に整理する相手。 私はそう思って付き合っていますし、そのほうが長く役に立ってくれています。