「AIって、思ったほど使えなくないですか?」
職場でAIの話をすると、ときどきこう言われます。 詳しく聞いてみると、だいたい同じパターンです。
一度試した。 期待した答えと違うものが出てきた。 「まだこんなものか」と思って、使うのをやめた。
もったいないなあ、と思います。 その人はたぶん、AIに「一発で完璧」を期待していたんです。
私も最初はそうでした。 でも今は、最初から完璧を求めないことが、AIを使いこなす一番のコツだと思っています。
「一発で完璧」を期待すると失敗する理由
6割のたたき台から往復で仕上げる運用
無駄な往復を減らす、直し方の伝え方
AIは自動販売機ではない
「一発で完璧」を期待するのは、AIを自動販売機として見ているからです。
お金を入れたら、完成品が出てくる。 出てきたものが気に入らなければ、この販売機はハズレ。
でも、AIの実際の姿は自動販売機より、新しく入ってきた優秀な後輩に近いです。
仕事はものすごく速い。知識も広い。 ただし、こちらの職場の事情はまだ何も知りません。
新人に仕事を頼むとき、最初の一発で完璧なものが返ってくるとは誰も思いません。 まず叩き台を出してもらって、「ここはこう」「うちではこの言い方で」と直していく。 2、3回の往復で、ちゃんと使えるものになる。
AIも同じです。 一発の出来で評価するものではなく、往復で仕上げる相手。 この期待値に切り替えるだけで、「使えない」が「使える」に変わります。

6割のたたき台は、ゼロより圧倒的に速い
「結局直すなら、自分で書いた方が早くない?」
これもよく聞かれます。 答えは、直す作業はゼロから作る作業より、ずっと軽いです。
白紙から報告書を書くときの、最初の30分を思い出してください。 何から書くか、どう構成するか、書き出しの一文をどうするか。 一番エネルギーを使うのは、この「ゼロを1にする」部分です。
AIのたたき台は、ここを丸ごと飛ばしてくれます。
出てきたものが6割の出来だとしても、
- 構成が目の前にある(直せばいい)
- 表現の候補がある(選べばいい)
- 「これは違う」が分かる(違いが分かれば、正解に近づいている)
人間は、白紙に書くより赤を入れる方が得意です。 6割のたたき台は、最初の30分を5分に変えてくれます。

往復のコツは「どこがどう違うか」を言葉にすること
たたき台前提の運用にすると、次の課題は往復の質です。 ここで差がつきます。
ダメな直し方は、こうです。
なんか違います。もっといい感じにしてください。
これだと、AIは当てずっぽうで書き直すしかありません。 ガチャを引き直しているのと同じで、何往復しても狙ったものに近づきません。
効く直し方は、どこが・どう違うかを伝えることです。
構成はこのままでいいです。 ただ、全体に硬すぎるので、現場の朝礼で口頭説明するくらいの柔らかさにしてください。 あと、2番目の段落の内容はうちでは該当しないので削ってください。
「いいところ」「変えるところ」「その理由」。 この3点を渡すと、次の一往復で一気に仕上がります。
面白いことに、この直しの指示を言葉にする作業は、自分が何を求めていたのかを自分に教えてくれます。 「なんか違う」の正体を言語化できた時点で、仕事の半分は終わっているのかもしれません。

「完璧を求めない」は、仕上がりを妥協することではない
誤解のないように書いておくと、これは仕上がりの基準を下げる話ではありません。
最終的に出すものの質は、妥協しない。 ただ、その質に至る道のりを「一発の完璧」ではなく「たたき台+往復」に変える、という話です。
むしろ、往復前提の方が仕上がりは良くなります。 一発出しのプロンプトを30分こねくり回すより、雑に出して3往復した方が、速くて確実です。
最初の渡し方は、箇条書きで十分です。
→ ChatGPTにうまく質問できない人は、まず箇条書きで渡せばいい
往復しても答えが浅いままのときは、渡している材料を疑ってみてください。
まとめ:一発勝負をやめると、AIは使える
- AIは自動販売機ではなく、職場の事情を知らない優秀な新人
- 6割のたたき台は、ゼロから作る重さを消してくれる
- 直しは「残すところ・変えるところ・理由」をセットで伝える
- 仕上がりの質は妥協しない。道のりだけを往復型に変える
「一度試してがっかりした」経験がある人は、もう一度だけ、期待値を変えて試してみてください。
完璧な指示で完璧な答えを引き出す必要はありません。 雑に始めて、的確に直す。 AIと仕事をするリズムは、それで十分です。