AIのおかげで、非エンジニアでもアプリが作れる時代になりました。
これは本当にすごいことです。 私自身、家族用の記録アプリを作って、その恩恵を実感しています。
ただ、作れるようになったからこそ、新しい問題も生まれました。
「作れる」と「作るべき」は別だということです。
作れてしまうから、勢いで作り始める。 作り終わってから、「あれ、これ既にあるアプリで良くなかったか?」と気づく。 あるいは、誰にも使われないものが手元に残る。
今日は、作り始める前に自分に聞くようにしている5つの問いを書きます。 作る気持ちにブレーキをかける話ではなく、作ったあとの後悔を減らす話です。
作る前に自分に聞く5つの問い
「既存サービスで済むか」の現実的な判断基準
それでも作る価値がある、という話
問い1:それは、既存のサービスで済まないか?
最初の問いが、一番大事です。
作りたいものが浮かんだら、まず検索します。 記録アプリ、家計簿、タスク管理。たいていの分野には、優秀な既存サービスがすでにあります。
判断基準は、こうしています。
既存サービスが「8割」満たすなら、まず既存を使う。
残りの2割の不満のために自作すると、その2割と引き換えに、開発とメンテナンスの全部を背負うことになります。
逆に、既存サービスを試して「うちの使い方だと、肝心なところが合わない」が確認できたなら、それは作る理由になります。 私の家族用アプリも、既存アプリを試して続かなかった経験が出発点でした。

問い2:誰が、いつ使うのか?
「あったら便利そう」は、危険な言葉です。
便利「そう」なものは、たいてい使われません。 実際に使われるのは、具体的な誰かの、具体的な場面があるものだけです。
- 誰が使う?(自分?家族?)
- いつ使う?(毎日?月1回?)
- 使う場面を、1つの物語として話せるか?
「妻が、寝る前に、その日の記録をスマホから30秒で入力する」 ここまで具体的に言えるなら、作る価値があります。
逆に「みんなが便利に使える何か」しか言えないなら、まだ作るときではありません。 このテーマは、こちらで詳しく書きました。
→ 個人開発で大事なのは、技術より「何を解決したいか」だった
問い3:データはどこに置き、漏れたら何が起きるか?
アプリを作ると、データが生まれます。 作る前に、2つだけ確認します。
そのデータは、どこに保存されるのか。 自分のPCの中か、外部のサービス(データベース)か。外部なら、無料プランの条件も軽く見ておきます。
そのデータが漏れたら、何が起きるか。 自分の読書メモなら、痛いけど致命傷ではない。 家族の名前や健康の記録なら、話がまったく変わります。
漏れたときの痛みが大きいデータを扱うなら、ログインや鍵の管理といった基本のセキュリティが必須になります。 「守る自信がないなら、そのデータは入れない」という判断も含めて、作る前に決めておくことです。

問い4:完成後も、面倒を見続けられるか?
アプリは、作って終わりではありません。
- 使っているサービスの仕様変更
- 「ここも直してほしい」という家族からの要望
- たまに起きる不具合
大きな手間ではありませんが、ゼロでもありません。 アプリを持つのは、小さな畑を持つのに似ています。放置すれば、静かに枯れます。
ここで確認したいのは覚悟の有無というより、メンテナンスも込みで楽しめそうかです。 正直、私はこの「ちょっと手入れする時間」も含めて楽しんでいます。そう思えるものなら、作って大丈夫です。
問い5:公開するのか、しないのか?
最後の問いは、完成後の話に見えて、実は最初に決めておくべきことです。
自分や家族だけで使うのと、一般に公開するのとでは、背負うものがまったく違います。 サポート、セキュリティの水準、何かあったときの責任。
私は「家族専用・一般公開しない」を最初に決めて作りました。 その判断の理由は、こちらに書いています。
→ 非エンジニアがAIでWebアプリを作ったあと、一般公開しないと決めた理由
最初から「公開しない」と決めてあると、設計も気持ちもずっと軽くなります。 公開はあとからでも検討できます。逆は大変です。
5つの問いを通っても、迷ったら作っていい
ここまで読んで、「ハードルが高いな」と感じたかもしれません。
最後に、逆のことを言います。
5つの問いに完璧に答えられなくても、学びのために作るなら、それも正解です。
既にあるものと同じでも、誰も使わなくても、「一度作ってみる」経験そのものに価値があります。 作って初めて分かることが、本当にたくさんあるからです。
→ AIで開発するなら、車輪の再発明でもいいから一度作ってみる
矛盾しているようですが、整理するとこうなります。
誰かに使ってもらうものなら、5つの問いを通す。 自分の学びのためなら、今すぐ作り始めていい。
どちらのつもりで作るのかだけ、最初にはっきりさせておく。 それが、作れる時代との一番いい付き合い方だと思います。

まとめ:作れる時代だから、考えてから作る
- ① 既存サービスが8割満たすなら、まず既存を使う
- ② 「誰が・いつ使うか」を物語として話せるか
- ③ データの置き場所と、漏れたときの痛みを確認する
- ④ メンテナンスも込みで楽しめそうか
- ⑤ 公開するかしないかを、最初に決める
- そして、学びのためなら、この問いを全部飛ばして作っていい
作れるようになった私たちに必要なのは、技術よりも、この小さな立ち止まりなんだと思います。
考えてから作る。作りながら学ぶ。 このブログでは、引き続きその記録を続けていきます。